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【独自解説】超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認【ポスドク・助教関連ニュース@アカラボ】

【独自解説】超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認【ポスドク・助教関連ニュース@アカラボ】

※記事内には一部PRを含む場合があります

定期的に発信している「ポスドク・助教関連のニュース解説」のコーナーです。

今回は、LIMOに掲載されていた「超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認」(2022年8月22日)について解説していきます。

記事の要約

本記事の信頼性

本記事の筆者は、大学のポスドク(特任助教)を経験した後、現在は企業研究職へ転職し研究活動を続けています。大学、企業で研究してきた経験をもとに、ポスドク関連ニュースを解説していきますね。

【博士の就職率】博士課程修了者の「就職率」は60%台(非正規雇用含む)

就職

記事内容の1つ目は、「博士課程修了者の就職率」に関するお話です。

博士課程修了者の就職率は60%台を長年にわたってキープしています。
博士課程修了者の就職率は年々上昇傾向にあり、2021年の博士課程修了者の就職率は68.4%です。

ただし、この調査における「就職者」には正社員だけでなく、非正規雇用も含まれていることに留意する必要があります。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

博士課程修了者の就職率は、非正規雇用も含め60%台で推移しているそうです。

学部生や修士学生の場合は、修士課程や博士課程へ進学する場合もありますが、博士卒の人が就職しない場合は完全な無職、あるいは無給の研究員ということになるでしょう。

参考記事で問題提起している「博士課程修了者は就職が難しい」というのはその通りであると受け入れざるを得ないデータとなっています。

【ポスドク問題】博士課程修了者が経済的に厳しい状況に陥りやすい

悩み2

記事内容の2つ目は、「博士課程修了者が経済的に苦しんでいるポスドク問題」に関するお話です。

現在の日本が抱えている問題の一つとして、ポスドク問題が挙げられます。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

  • 任期付きポジション
  • 低賃金
  • ポスト不足・高競争率

などの課題が複合的に絡まる「ポスドク問題」に関しては、様々な記事で社会問題として取り上げられており、日本解決すべき問題の一つになっています。

参考記事では、ポスドクが経済的に苦しむ理由をいくつかあげており、ここではそれらの理由の中から3つの課題を取り上げて以下で紹介します。

理由①:博士号取得に時間がかかる

博士課程に3年間在籍し、必要な単位を取得することで、博士論文を提出する資格を得られます。

しかし、ほとんどの方が博士課程入学から6年以上かけて博士論文を執筆しています。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

博士課程の取得には、基本的に3年間必要になります。

参考記事で書かれていた「ほとんどの人が6年以上かけて博士論文を執筆」は流石に言い過ぎ、あるいは一部の学部や社会人博士に偏ったデータであると思われます。

まさひろ

文部科学省のデータを見ると、博士取得までに6年以上かかった人の割合は、令和2年時点で約18%となっていますね

たしかに正規の3年間で卒業できない博士学生(オーバードクター)は多く、卒業する頃には27~30歳近くになってしまいます。

民間企業は基本的には若い人材から優先的に採用していくので、卒業時点で歳を取っている博士人材は就職しにくい状況があると思われます。

理由②:大学の専任教員のポストが少ない

大学教員の求人は定期的に出るものではありません。また、自身の専門分野の求人が出たとしても、内定を得るには厳しい競争を勝ち抜く必要があります。

募集があまりない上、高倍率となると、就職するまでに時間がかかります。就職が決まるまでは大学の非常勤講師やアルバイトなどで生計を立てる方が多いのです。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

多くの博士課程修了者が目指すアカデミックポジションは、なかなかポストが空かないうえ、応募しても10~100倍を超えるような非常に高い倍率を勝ち抜く必要があります。

まさひろ

実際に私がポスドクをしていたときも、大学の准教授や教授ポジションが全然動かなかったり、大学が支出を抑えるために新規採用を凍結しているという現実を目の当たりにしており、30歳を超えても不安定なポスドクを続けている人を多く見てきました。

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しかも、そのような高倍率を通り抜けてポスト獲得、昇進したあとも、授業や大学運営関係、研究費獲得、学会運営活動など、メインの研究活動の仕事が大幅に増加し、実験や計算に集中しにくい環境になってしまいます。

一方、企業の研究所であれば、研究メインの人と運営・マネジメントメインの人が明確に分かれていますので、研究の人が多くの雑務に追われるような環境にはなりにくいです。

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研究者ポストの数を増やす、あるいはせめて昇進したら研究者として研究活動に集中できる環境整備が求められています。

理由③:新卒採用のレールに乗れない

博士課程2年目の学生が、学部3年生と同じ新卒採用のレールに乗ることは難しいでしょう。

博士課程修了後に一般企業に就職するためには、学部生以上の行動力が就職活動で必要です。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

博士課程は、新卒で就職するとしても、学部生や修士学生と同じ枠で採用されることは少ないです。

どちらかというと、中途採用のように企業にマッチングする人がいればその枠を専用に設ける形のほうが多いです。

参考記事ではマイナス要素のように書かれていますが、必ずしも新卒扱いされないことがマイナスになるわけではありません。

たしかに博士の採用枠は新卒枠と比較すると桁違いに少ないのですが、その分マッチングさえしてしまえば一人二人くらいは柔軟に採用枠を変動させる可能性があります。

あなたの専門が企業が求める分野に一致することを強くアピールすることができれば、当初採用枠がなかったとしても企業採用される可能性は十分にあります。

ともこさん

自分の専門性と合致する企業、研究所を見つけることが大切なんですね

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【博士人材のポスト】博士課程修了者が持つ「基礎スキル」を活かしにくい環境に

研究室

記事内容の3つ目は、「博士人材のスキルの生かし先」に関するお話です。

博士課程修了者の多くが一般企業でも役立つ基礎スキルを大学院で培っていると見受けられます。
たとえば、大学院在学中に研究室の運営を通してマネジメントスキルを身に付ける方は多いです。
また、学会発表を通してプレゼン慣れしている方や、研究の一貫として事務作業に慣れている方もたくさんいます。

しかし、現状としては、博士課程修了者が安定的なキャリアを築くことは容易でないといえるでしょう。
その原因として、博士課程修了者が研究職以外の職を希望していないことや、多くの企業が博士課程修了者の入社を想定していないことが挙げられます。

超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認
 ー LIMO

博士課程修了者の多くが高い社会人スキルを持っているにも関わらず、企業の受け入れ体制や研究者自身の強いこだわりによって、安定的なキャリア形成が難しいという内容です。

大学で身についた研究遂行のためのアカデミックスキルは、企業でもそのまま通用する場面が多いです。

アカデミックスキルには、例えば以下のようなものが挙げられます。

企業でも重宝される大学スキル
  • 論理的思考力
  • ライティングスキル
  • 発想力(独自アイデア創出)
  • 情報収集能力
  • 財務管理能力
  • 教育能力

引用:【需要上昇中】ポスドク・助教は民間企業に採用されやすい?最近の転職市場動向を踏まえた博士人材需要をくわしく解説【研究職】

論理的思考力や情報収集能力、教育能力といった能力は、企業で研究を進める場合でも必須のスキルです。

このような素晴らしいスキルを持っている博士人材ですが、まだ企業の受け入れ体制が十分整っていないことや「どうしても自分のやりたいテーマだけをやりたい」という研究者側が少なくないことから、なかなか企業採用が進んでいません。

それでも、最近は企業側もアカデミア人材の有用性に気づき、博士採用を増やす流れができてきています

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研究者側も、企業で働くことのメリット・デメリットをしっかりと把握した上で、ある程度自分がやりたいことと求められているスキルとのバランスを考えたキャリアプランを構築することが大切です。

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ともこさん

企業、博士研究者がお互いに歩み寄ってマッチングしていくことが大切なんですね

【まとめ】「自分のやりたいこと」と「社会に求められていること」のバランスを考えることが重要

本記事では、LIMOに掲載されていた「超高学歴なのに就職が難しい?「博士課程修了者」の就職率や進路、経済的に不安定になりやすい理由を確認」(2022年8月22日)について解説してきました。

記事の要約

博士の就職率の低さや、ポスドクのポスト数や任期に関する問題は数十年前からずっと議論されていますが、未だに根本的な解決には至っていません

現在ポスドクをされている方々は不安に感じる状況が続いていますが、少し視線を外に移してみると最近はポスドクに対する企業需要が高まっています

私もそうだったのですが、小学校から大学院博士課程、そしてポスドクまでずっと『学校』にいたことで、企業に就職したり起業することが「怖く」感じてしまっている人も多いのではないかと思います。

しかし、その怖さを乗り越えて企業転職する事ができれば、年収が高く福利厚生も充実していて、任期もない企業研究職として活躍できる可能性が十分あります。

もちろん、大学のメリットもたくさんあるのですぐすぐ結論を出すのは難しいと思います。

まずは忙しい研究活動の間の空き時間を見つけて、自分自身のキャリアを考える時間を作ってみてはいかがでしょうか?

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まさひろ

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以上で、ポスドク・助教関連ニュースの解説は終わりです。

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お疲れ様でした!