※記事内には一部PRを含む場合があります
定期的に発信している「ポスドク・助教関連のニュース解説」のコーナーです。
今回は、CGTN Japaneseに掲載されていた「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」(2022年7月26日)について解説していきます。
- 【ポスドクの大規模募集】
上海市が5157人分のポスドク求人情報を発表、国内外の優秀な人材が上海で働くことを求める - 【年収】
年収は500万円~700万円に集中、1400万円/年の求人も - 【福利厚生】
半数以上のポストは住宅手当あり、マンション提供するポストも - 【研究機関】
中国トップクラスの科学研究機関や大学、世界トップ企業がポスドクを求める - 【研究分野】
バイオメディカル、新素材、化学工業、集積回路、人工知能などの分野でニーズが多い
【ポスドクの大規模募集】上海市が5157人分のポスドク求人情報を発表
記事内容の1つ目は、「上海市が5157人分の大規模なポスドク求人情報を発表した」というお話です。
上海市は25日、世界に向けて、ポストドクターを対象にする5157人分の求人情報を発表し、国内外の優秀な人材が上海で働くことを求めました。
「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」
ー CGTN Japanese
上海市が国内外の優秀なポスドクを求めて、5157人分の求人情報を発表したそうです。
日本では、特に大学のポスドク受け入れポジションが不足しており、昇進できない任期付きポスドクがあぶれていることが問題となっています。
文部省が1996年度から始めた「ポスドク1万人計画」によってポスドクの人数が2倍程度増加したにも関わらず、国が想定したほど大学や企業がポスドクを採用するポジションを用意しなかったことが要因の1つと言われています。
実際に私がポスドクをしていたときも、大学の准教授や教授ポジションが全然動かなかったり、大学が支出を抑えるために新規採用を凍結しているという現実を目の当たりにしており、30歳を超えても不安定なポスドクを続けている人を多く見てきました。
そのような中、上海がここまで大規模なポスドク求人を出したことは、日本も注視する必要があると考えられます。
日本からの人材流出や研究職を志望する若者の減少など、国際的な競争力の低下に直結する可能性が高まっており、国や大学、あるいは研究者自身が、研究者のキャリアをどのように歩ませるか?を考える必要が高まっているのです。
【年収】年収は500万円~700万円に集中、1400万円/年の求人も
記事内容の2つ目は、「上海市が出したポスドク求人の年収」に関するお話です。
その最高年収は70万元(約1400万円)で、大部分は25万元(約500万円)から35万元(約700万円)の間に集中しています。
「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」
ー CGTN Japanese
今回発表した求人では、500万円~700万円の年収が多くを占めており、中には1400万円/年もの給料を出す求人もあるようです。
日本の場合、ほとんどのポスドク求人は30万円/月、年間で300~400万円程度であることが多いです。
ちなみに、有名な日本学術研究会の特別研究員(PD)でも36万円/月の支給になります。
私自身も、ポスドク(特任助教)のころは30万円/月(税引前)の給料をもらっていました
日本の現状と比較すると、今回上海が出した求人がいかに高待遇かご理解いただけると思います。
給料、賞与の話を含め、ポスドクから民間企業へ転職する前後の年収比較を紹介していますので、興味がある方は是非ご覧ください。
【福利厚生】半数以上のポストは住宅手当あり、マンション提供するポストも
記事内容の3つ目は、「上海市が出したポスドク求人の福利厚生」に関するお話です。
また、30%ほどのポストはマンションの提供があり、50%以上は住宅手当があるということです。
「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」
ー CGTN Japanese
年収の高さだけでなく、福利厚生も充実しているようで、半数以上は住宅手当がついており、中にはマンションの提供によって無料で住居を確保できるポストもあったそうです。
私がポスドクをしていたときは、住宅手当は1円ももらえませんでしたし、先に紹介した日本学術研究会の特別研究員(PD)も住宅手当が出ることはありません。
上海のポスドクポジションがしっかりとした待遇で優秀な人材を獲得したいという意思が伝わってきますね
日本でも、民間企業であればしっかりとした福利厚生を得ることができます。
大学 特任助教 | 企業 研究職 | |
---|---|---|
家賃補助 | 0万円/年 | 60万円/年 |
家族手当 (配偶者1名を想定) | 0万円/年 | 25万円/年 |
企業型 確定拠出年金 (DC) | 0万円/年 | 12万円/年 |
カフェテリア 補助 | 0万円/年 | 6万円/年 |
食事手当 | 0万円/年 | 6万円/年 |
自社株買い 補助 | 0万円/年 | 5万円/年 |
財形補助 | 0万円/年 | 12万円/年 |
合計 | 0万円/年 | 126万円/年 |
大学と企業の福利厚生比較を以下の記事で紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
【研究機関】中国トップクラスの科学研究機関や大学、世界トップ企業がポスドクを求める
記事内容の4つ目は、「上海市が出したポスドク求人の研究機関」に関するお話です。
今回求人を出したのは、123の大学・研究所・企業に設置された259のポスドクワークステーションです。中国科学院上海技術物理研究所、上海交通大学、復旦大学、中国商用飛機(COMAC)など国内トップクラスの科学研究機関や大学、世界トップ企業などが含まれています。
「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」
ー CGTN Japanese
今回求人を出したのは、中国内トップクラスの科学研究機関や大学、世界トップ企業などが含まれていたそうです。
特に注目すべきは企業も積極的に科学分野のポスドクを募集しているという点でしょう。
近年は理系ポスドクを中心に中途採用でポスドクを採ろうとする動きが世界的に活発化しています。
2022年現在、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)、マテリアルズインフォマティクス(MI)、カーボンニュートラルなどのような大きな変革のタイミングにあり、企業もそれらを取り込んだ「変化」が求められています。
コロナ流行を境に、ニュースやネット記事でも「変化が求められる企業」のような言説で語られることがさらに多くなってきましたよね
先が見えない変革の時代を生き抜くためには、常に最新の情報にアンテナをはり、新たなアイデアを生み出し続ける能力やバイタリティを持った人材が必要になります。
この需要にピッタリの能力を持ち合わせているアカデミア人材は急速に企業需要が高まっているのです。
実際に私の周りでも、転職活動を開始してすぐに大企業から採用されたポスドクや助教の事例を何件も見てきました
日本にいるポスドクの方は、アカデミアだけにこだわらず企業研究所も含めてキャリアを考えてみると、明るい未来が拓けてくる可能性があります。
【研究分野】バイオメディカル、新素材、化学工業、集積回路、人工知能などの分野でニーズが多い
記事内容の5つ目は、「上海市が出したポスドク求人の研究分野」に関するお話です。
また、国家レベルと市レベルの重要プラットフォームや重要任務とプロジェクトからの求人は全体の約90%を占めており、バイオメディカル、新素材、化学工業、集積回路、人工知能などの分野でのニーズが多いということです。
「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」
ー CGTN Japanese
今回上海から出た求人を見ると、バイオメディカル、新素材、化学工業、集積回路、人工知能などの科学分野でのニーズが多かったそうです。
先にも紹介しましたが、現在はAIやカーボンニュートラルなど、世界的にドラマチックな変化が求められる流れになってきています。
今回上海から出た大量のポスドク求人情報は、そのような変化が求められる社会でポスドクのような優秀でバイタリティの高い人材が求められていることを示す良い事例だと思います。
現在ポスドクの方は、企業転職も含め、より自分が活躍できるフィールドがどこなのか?を一度立ち止まって考えてみるのも良いかもしれませんね。
【まとめ】ポスドクの民間企業需要は高まっている!
本記事では、CGTN Japaneseに掲載されていた「上海、ポスドク5157人分の求人情報を発表 最高年収1400万円」について解説してきました。
- 【ポスドクの大規模募集】
上海市が5157人分のポスドク求人情報を発表、国内外の優秀な人材が上海で働くことを求める - 【年収】
年収は500万円~700万円に集中、1400万円/年の求人も - 【福利厚生】
半数以上のポストは住宅手当あり、マンション提供するポストも - 【研究機関】
中国トップクラスの科学研究機関や大学、世界トップ企業がポスドクを求める - 【研究分野】
バイオメディカル、新素材、化学工業、集積回路、人工知能などの分野でニーズが多い
今回の上海の事例だけにとどまらず、海外では優秀なポスドクや研究人材を獲得しようとする動きが活発化してます。
日本もその流れの例外ではなく、近年はポスドクに対する企業需要が高まっています。
今ポスドクの方は、一歩踏み出せば年収が高く、福利厚生も充実していて、任期もない企業研究職に転職できる可能性は十分あります。
もちろん、大学のメリットもたくさんあるのですぐすぐ結論を出すのは難しいと思います。
まずは忙しい研究活動の間の空き時間を見つけて、自分自身のキャリアを考える時間を作ってみてはいかがでしょうか?
転職を支援してくれる専門サービスも存在します。
職務経歴書へのアドバイスや面談対策、日程調整まで細かにサポートしてくれますので、本気で転職を考えている人は是非調べてみてくださいね
以上で、ポスドク・助教関連ニュースの解説は終わりです。
質問等ありましたら、問い合わせフォームもしくはTwitterからお問い合わせください。
お疲れ様でした!