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現在ポスドクや助教をされておられる方の中には、なかなかテニュアポジションが獲得できず悩んでいる人もおられるのではないでしょうか?
ポスドクや助教の「任期問題」は何年も前から叫ばれていますが、一向に改善の傾向がなく将来不安に感じている人も多いですよね。
この記事では、ポスドクから任期無しの民間企業研究職に転職した私が、転職してから実感した任期付きポジションのメリットとデメリットを紹介していきます。
本記事を読むことで、企業も含めた研究職ポジンションの“リアルな事情”を知ることができますよ。
任期付き研究職ポジションのメリット
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのメリットは以下の4点です。
メリット①:【やる気】高い研究モチベーションを維持しやすい
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのメリット1つ目は「高い研究モチベーションを維持しやすいこと」です。
「任期」という分かりやすいデッドラインがあることで、常に成果、業績を挙げ続けるモチベーションが維持しやすくなります。
会社の場合、同じ研究者でも、定年逃げ切り体制のおじいちゃんや、配属先のテーマが気に入らず公務員のように研究している研究員も複数見受けられます。
“働かないおじさん”のような話は噂には聞いていましたが、入社してから実際に見て「本当にいるんだ…」と驚きました
こういう人たちを見ていると、少なくとも元気に体を動かしてバリバリと研究を進められる40代くらいまでは、任期制のように強制的にやる気を出させるような仕組みが必要なのかもと感じます。
そういった意味で、ポスドクや助教の任期付きポジションは、研究者としての成長のためにプラスに働いている面もありますね。
メリット②:【運要素】”ハズレ”研究室に入っても短期間だけだと割り切れる
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのメリット2つ目は「”ハズレ”研究室に入っても短期間だけだと割り切れること」です。
任期が切れるたびに他の研究室に移っていく場合が多いと思いますが、中には教授の圧力が強すぎたり、実験装置が全然なくて研究が進まないといった“ハズレ”研究室に当たることもあると思います。
どの環境でも成果を出すんだという気概で乗り切れれば良いですが、そう簡単にいかないようなところもありますよね
任期なしの教授が、「ここまで共有設備が充実しておらず、また学生のやる気もない大学だとは思わなかった…」と赴任後に後悔している話も聞いたことがあります
そういったときに、数年間という限られた任期があれば、短期間だけだと割り切って今できることに集中しやすいです。
例えば、
- 所属大学の他の研究者とつながりを作っておく
- 前所属のときの研究成果をまとめて論文を出しておく
- 種蒔き的に小さなアイデアを沢山試してみる
- 次ポジション獲得のための就職活動を早めに開始する
etc…
任期ありであれば気持ち的にも割り切りやすいので、”ハズレ研究室”に当ってしまうという想定外にも対応しやすいですね。
メリット③:【視野】多くの研究室の知見を得て視野を広げられる
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのメリット3つ目は「多くの研究室の知見を得て視野を広げられること」です。
今はほとんどのポスドク、助教ポジションは任期付きのため、アカデミア全体としてある程度人材の流動性が高い状況になっています。
したがって、基本的には任期が切れたあとは他の研究室に移ることになりますが、それによって複数の研究室の知見を得ることができます。
1つの研究室で安定して成果を出し続けることも重要ですが、一方で1研究室に籠もっていても気づけないような手法や考え方があるのもまた事実です。
各研究室がそれぞれ持っている研究知見を吸収して新たな発見に繋げられる可能性があるという意味で、任期付きで流動性のある環境はメリットもあると感じています。
メリット④:【反省】公募審査のたびに自分の立ち位置や研究成果を見直すことができる
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのメリット4つ目は「公募審査のたびに自分の立ち位置や研究成果を見直すことができること」です。
任期がなく長期間腰を据えて研究を進められる環境になると、つい「この研究は後回しでもいいかな…」と考え、気づいたら何年間も放置してしまっていたということも起こりえます。
一方、任期付きで定期的に公募を受ける必要があると、強制的に自分のこれまでの成果や立ち位置を定期的に振り返ることになりますので、そういった研究テーマの放置が起こりづらくなります。
私自身も、企業に入ってから研究計画管理が甘くなってしまったなと反省しています…
公募審査によって、過去の研究を反省しこれからの研究を考える機会という良い機会になっているという意味で、任期付きポジションは研究者を継続していくためにプラスになっていると感じます。
任期付き研究職ポジションのデメリット
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのデメリットは以下の4点です。
デメリット①:【精神面】40代頃になるまで不安定な生活が続くため精神的につらい
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのデメリット1つ目は「40代頃になるまで不安定な生活が続くため精神的につらいこと」です。
一般的には、テニュアの准教授として採用されるのは40歳近くになると思います。
それまで、1~5年先までしか見えていない状況で過ごしていくのは精神的に辛く感じる部分があるでしょう。
特に20~30代は定年まで非常に長い期間があり、私も「本当にこのまま研究を続けていて幸せな人生を送れるのんだろうか」と不安に感じることもありました
もちろん、自分の実力・未来を信じて突き進められる人であれば全く問題はありませんが、アカデミアの研究者全員がそのように走り続けられるわけではありません。
いわゆる”脱落者”を多く生じさせやすい現行の任期制度には、大きな問題があると言えます。
デメリット②:【移動費】研究室を引っ越しするための費用負担が大きい
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのデメリット2つ目は「研究室を引っ越しするための費用負担が大きいこと」です。
特に実験系の研究者の方は、任期が切れて研究室を移動する際の引っ越し代も馬鹿にならない金額になると思います。
場合によっては引越しだけで1000万円以上かかる場合もあり、このお金のために大型の研究費を取らないといけなくなります。
ただでさえ研究費獲得が難しいのに、さらに引っ越しのためのお金も確保しなくてはいけないのはつらいですね…
もちろん、大学側から一定額出してもらえる場合もありますが、そういったポジションはやはり人気が高く簡単には採用されません。
3〜5年おきの研究室移動は、研究費面でも大きな負担になっています。
デメリット③:【研究規模】目先の成果獲得に走りがちになる
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのデメリット3つ目は「目先の成果獲得に走りがちになること」です。
これもよく任期付き問題で語られるテーマでありますが、任期内に一定の成果をあげるためにどうしても目先の成果に走りがちになる問題点があります。
10年、20年かけてでも、後世に語り継がれるような大きな成果をあげることができれば、研究者自身としての満足感も高いですし、何より人類全体にとって重要な進歩になります。
しかし、自分自身が次ポジションを獲得するために短期間で一定の成果をあげる必要があるとなると、比較的小さなテーマで論文を出し続ける必要に迫られます。
私の周りにも、「テニュアを取るまでは大きな仕事は難しいね」とおっしゃっていた先生がおられました。かといって教授になっても、様々な大学業務が降ってきて研究どころではなくなってしまうので大変難しい問題だと思います
せっかく創造性、想像性の富んだ優秀な研究者を、このような目先業務に走らせてしまう任期雇用は問題であると言わざるを得ません。
デメリット④:【家庭】結婚や出産子育てなどの将来的な家族計画を立てづらい
研究者(ポスドク・助教)にとっての任期付きポジションのデメリット4つ目は「結婚や出産子育てなどの将来的な家族計画を立てづらいこと」です。
一般的に任期付きとして雇用される20~30歳代は、研究者の成長という意味でも重要な時期ですが、それと合わせて結婚や出産、子育てといったプライベートな面でも大変重要な時期となります。
これは実際によく聞いた話ですが、付き合っている彼女から「非正規の状態で結婚するのは難しい」と言われなかなか結婚できなかったり、他大学への異動をきっかけに別れてしまったりといったことが多いようです。
彼女さんのご両親に良い顔をされない場合もあるでしょうしね
企業の場合は出産、育児休暇などの福利厚生を取得しやすかったり、給料も国立大学のポスドク・助教よりも高い場合が多いので、安心して家庭を築くことができます。
ポスドク、助教の方が安心して家庭を築くのが難しい点も、任期付きポジションのデメリットとなります。
【ポスドク・助教】民間企業への転職を成功させるには?
ここまでで、任期付きポジションのメリットとデメリットをくわしく見てきました。
個人的にはやはり任期無しが良いなと思いました。アカデミアで即刻任期無しポジションに移ることは現実的ではないので企業転職を考えたいのですが、具体的にどのように行動すれば企業転職を成功させることができるのでしょうか?
現在ポスドク・助教をされておられる方が、民間企業転職を成功させるコツは以下の4点です。
- 【時間の確保】他人を活用して効率的に動くべし
- 【求人探し】非公開求人を探すべし
- 【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし
- 【面接対策】企業側の懸念点を理解し面接官を安心させるべし
特に、民間企業の研究職への転職を考えている人は「非公開求人」を徹底的に探すことが重要になります。
大衆向けの就活・転職サイトに登録されている求人を確認したことがある人は多いと思いますが、実はそれらの公開求人の他に、大々的には公開していない非公開求人というものが存在しています。
研究職ポジションなどの専門性が高い職種は、競合企業に内部戦略を知られないように求人を完全公開しないことが多いのです。
非公開求人というものがあるんですね!?
でも、どうやって探せばよいのでしょうか?
非公開求人を確認するための一つの方法は、直接企業に問い合わせてみることです。
もしあなたが、学会や特許情報などを通じて「この企業はこの研究をしているはず」という情報を掴んでいるのであれば、履歴書とともに直接企業に問い合わせることで非公開の求人情報を入手できる可能性があります。
ただ、やはり1社1社直接企業に問い合わせるのも非常に骨の折れる作業になります。
効率的に非公開求人情報を手に入れるには、「転職エージェント」が持っている非公開求人リストを入手するのがおすすめです。
転職エージェントは各企業とマッチングする求職者にだけ求人情報を提示していることから企業と親密な関係を築いることが多く、秘密性の高い非公開求人情報を多数保有しています。
優秀な人材を多数紹介してきた転職エージェントへの信頼性の高さによって、企業側も非公開求人という秘匿性の高い情報を特別に渡しているのですね
そのような非公開求人情報を手に入れられるだけでなく、職務経歴書の添削や面談対策まで、徹底してあなたの転職活動をサポートしてくれます。
ここまで手厚くサポートしてくれる転職エージェントですが、企業からの報奨金で運営しているため転職希望者は完全無料で利用できます。
完全無料で利用できますので、今すぐに民間企業転職を考えてなくても「良い求人が出てきたら紹介してください」とエージェントに依頼しておくのもよいですね
アカデミア出身者 (ポスドク・助教・准教授)に おすすめの転職エージェントは以下の記事でくわしく紹介しています。
メリットだけでなくデメリットも踏まえて解説していますので、民間企業転職を考えている方は是非参考にしてみてください。
【まとめ】利点もあるが基本的には任期無しポジションを狙おう!
本記事では、ポスドクから任期無しの民間企業研究職に転職した私が、転職してから実感した任期付きポジションのメリットとデメリットを紹介してきました。
- 【やる気】高い研究モチベーションを維持しやすい
- 【運要素】”ハズレ”研究室に入っても短期間だけだと割り切れる
- 【視野】多くの研究室の知見を得て視野を広げられる
- 【反省】公募審査のたびに自分の立ち位置や研究成果を見直すことができる
- 【精神面】40代頃になるまで不安定な生活が続くため精神的につらい
- 【移動費】研究室を引っ越しするための費用負担が大きい
- 【研究規模】目先の成果獲得に走りがちになる
- 【家庭】結婚や出産子育てなどの将来的な家族計画を立てづらい
任期付きポジションは、研究者としてもモチベーションを維持するなどのメリットがある一方で、プライベートな面で金銭的、精神的に辛くなるデメリットがあります。
ポスドクから任期無しの企業研究職に転職した私の意見としては、できる限り若いうちから任期無しポジションに就いたほうがトータルで充実した研究者人生を過ごすことが出来ると考えています。
民間企業の研究職は任期無しのうえ、年収や福利厚生、勤務時間の点で優れている場合が多いので、そのような情報を踏まえて一度あなたの将来のキャリアを見つめ直してみてはいかがでしょうか?
転職を支援してくれる専門サービスも存在します。
職務経歴書へのアドバイスや面談対策、日程調整まで細かにサポートしてくれますので、本気で転職を考えている人は是非調べてみてくださいね
以上で、任期付きポジションのメリットとデメリットの紹介は終わりです。
質問等ありましたら、問い合わせフォームもしくはTwitterからお問い合わせください。
お疲れ様でした!