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現在大学で働いているポスドクや任期付きの助教の人の中には、新たな研究環境を求めて民間企業への転職を考えている人もおられると思います。
民間企業の待遇面の良さは聞いたことがあっても、アカデミアへのこだわりもあり、なかなか簡単には転職を決めきれませんよね。
この記事では、企業転職に抵抗があった私自身が転職前にアカデミアに対して抱いていたこだわりと、実際に企業転職した現在どう感じているかをくわしく紹介していきます。
本記事を読むことで、あなたの今後のキャリア選択の参考になりますよ。
【民間企業転職前】アカデミアにこだわっていた理由
私自身が民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由は以下の5点です。
理由①:【業績】これまで積み重ねた成果が無意味になるのが怖かったから
民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由1つ目は「これまで積み重ねた成果が無意味になるのが怖かったから」です。
大学で研究室に配属されてからポスドクをしている間に積み重ねてきた、
- 学術論文
- 学会発表
- 受賞
- 特許
- 研究費獲得
- 自分で開発した装置、手法
などの業績や開発装置などを手放し、これらがほとんど評価されない民間企業に移ることに対して「もったいないな」と強く感じていました。
企業では特許以外はほとんど評価されないと聞いていましたので、これまでの頑張りが否定されるように感じていたことを覚えています。
転職後の今はどう感じているか?
一度それらの業績を手放してしまった現在は、以下のように感じています。
特に、3つ目の業績の評価のされ方に関しては重要だと感じています。
大学での論文などの成果は企業(特に人事部)にはなかなか評価されづらい部分がありますが、企業業績である特許本数やマネジメント経験は大学でもある程度評価されます。
確かに、企業から直接大学の教授になった先生も結構いますもんね
もちろん、民間企業間の転職でも企業業績は高く評価されますので、少しでも民間転職の可能性を考えているのであれば、なるべく若いうちに転職しておくほうが良いと感じました。
理由②:【経験】社会人経験がなく企業で活躍できる自信がなかったから
民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由2つ目は「社会人経験がなく企業で活躍できる自信がなかったから」です。
今振り返ると、そもそも修士課程や博士課程に進学したのもポスドクまで残ったのも、なんとなく社会人になるのが嫌で「目の前にある大学のポジションに残りたい」というモチベーションが大きかったのだと思います。
社会人経験の無いまま30歳手前まで来てしまったことで社会人コンプレックスが強くなっており、「こんな自分が今さら企業でやっていけるのか…?」と不安に感じていました。
そのような不安を抱えていたことから、できる限り大学、アカデミアポジションにしがみつきたいと思っていたのです。
転職後の今はどう感じているか?
結局企業転職した私ですが、現在は以下のように感じています。
マジョリティである民間企業サラリーマンがアカデミアを少々馬鹿にしたような言説を聞くことも多いですよね。
しかし、やはりアカデミアで鍛えられるスキルは高度なものがあり、入社したあとも非常に役に立っていると感じています。
- 論理的思考力
- ライティングスキル
- 発想力(独自アイデア創出)
- 情報収集能力
- 財務管理能力
- 教育能力
引用:【需要上昇中】ポスドク・助教は民間企業に採用されやすい?最近の転職市場動向を踏まえた博士人材需要をくわしく解説【研究職】
この高いスキルがあることで、先に入社していた学部卒や修士卒の社員よりも活躍できると感じる場面は多々あります。
また、まだ若いと見られる30代前後のうちに企業で働くということを経験でき、自分の中のコンプレックスの1つが解消されました。
また、それと同時に今後のキャリアの幅を大きく広げられましたので、今は企業転職して本当に良かったと感じています。
理由③:【環境】研究環境が変わることが嫌だったから
民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由3つ目は「研究環境が変わることが嫌だったから」です。
数年間研究室で学んで慣れてきた装置やソフトウェアなどをガラッと変えて、全く新しい民間企業の研究環境に移ることにも抵抗を感じていました。
装置やソフトウェアだけでなく、様々な手続きや人脈なども大きく変わるため、これまでに積み重ねてきた経験がリセットされるように感じ、「できれば大学に残りたい」と常々思っていたのです。
私はいわゆる「現状維持バイアス」が強いほうなので、環境が変わることに非常に強いストレスを感じていました
転職後の今はどう感じているか?
実際に企業転職して研究環境を変えた現在は、以下のように感じています。
たとえ環境を変えたとしても、分からないことは分からないと言って学んでいけばいつかは慣れていきます。
当たり前のことですが、同じ研究室で進学、キャリアアップしていると、なかなか分からないことを聞きづらい雰囲気があり、自分自身の考え方も「分からないことは駄目なこと」と感じてしまうようになっていたのだと気づきました。
どんなに歳をとっても、常に真摯に学び続ける姿勢が必要だと改めて感じました
大学でのキャリアアップも多かれ少なかれ研究環境を変えなければならないときは必ずきますので、現状維持にこだわって自分のキャリアの選択肢を狭めるのは悪手だと今は思います。
理由④:【教育】学生の教育が楽しかったから
民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由4つ目は「学生の教育が楽しかったから」です。
大学にいた頃は、後輩への教育にも楽しさを感じており「大学の先生を続けるのも悪くないなあ」と修士学生の頃から思っていました。
自分自身の指導によって学生が成長していくのを見るのは他では味わえないような達成感があり、博士、ポスドクと進んだ部分があります
転職後の今はどう感じているか?
教育活動が主でない企業に転職した現在は、以下のように感じています。
企業に入社してまず私自身が反省したのは、大学のときの教育へのこだわりが自分自身の成長を妨げていたということです。
どういうことでしょうか?
学生に対して教育している自分自身に満足してしまい、さらに多くのことを学んで成長しようとする意欲が低くなっていたのです。
今思えば、もっと多くの書籍や論文を読み、新たな知見を詰め込むこともできたよなあと感じています
そういった自分自身の「逃げ」の姿勢に気づけただけでも、企業に入社したことは良かったと思います。
ただ、教育にこだわりがあった一方で、大学では学生が育ってきてもすぐに卒業してしまうのも少し悲しくも感じていました。
そういう意味では、長期間在籍することになる企業のほうが後輩指導のやりがいは強く感じることができるのかなと期待している部分もあります。
今でもまだ教育に対するこだわりは完全に捨てきれていません。
しかし、もしこのままこだわりを持ち続けていたとしても、十数年後に准教授や教授として大学に戻るという選択肢もありますので、今は企業研究職として様々な経験をしていきたいと考えています。
理由⑤:【給料】民間企業の年収と比較したことがなく現状に満足していたから
民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由5つ目は「民間企業の年収と比較したことがなく現状に満足していたから」です。
転職前には、民間企業と大学との間に待遇面の違いがどの程度あるのかもしっかりと調べていませんでした。
大学のほうが長時間働き自分一人で成果を出し続けなければならないというイメージから、給料も大学のほうが良いだろうと信じて疑いませんでした。
転職後の今はどう感じているか?
民間企業に転職し、給料や福利厚生などを実際に比較した結果、現在は以下のように感じています。
福利厚生も含めて比較すると、大学にいたときと比較し企業転職後は1.5~1.7倍程度の給料をいただくことができています。
残業代がしっかりと貰える部分も大きく、裁量労働制で働いていた大学のときと比較するとひと月で数万円の差がついています。
数万円/月でもらえている家賃補助も大きいですね
大学にいたときは「給料なんて二の次、最低限生活ができれば良い」と感じていましたが、実際に企業で金銭的、時間的に余裕がある生活を送っていると、金銭的待遇も重要だなと感じています。
大学のときは不規則な生活の中で、体力的にも精神的にもかなり無理な働き方をしていましたからね…
【ポスドク・助教】民間企業への転職を成功させるには?
ここまでで、私自身が民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由をくわしく紹介してきました。
企業転職前後のこだわり・考えの変化は理解できました。
私自身が抱いていた転職に対する不安も少し解消されたのですが、具体的にどのように行動すれば企業研究所への転職を成功させることができるのでしょうか?
現在ポスドク・助教をされておられる方が、民間企業転職を成功させるコツは以下の4点です。
- 【時間の確保】他人を活用して効率的に動くべし
- 【求人探し】非公開求人を探すべし
- 【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし
- 【面接対策】企業側の懸念点を理解し面接官を安心させるべし
特に、民間企業の研究職への転職を考えている人は「非公開求人」を徹底的に探すことが重要になります。
大衆向けの就活・転職サイトに登録されている求人を確認したことがある人は多いと思いますが、実はそれらの公開求人の他に、大々的には公開していない非公開求人というものが存在しています。
研究職ポジションなどの専門性が高い職種は、競合企業に内部戦略を知られないように求人を完全公開しないことが多いのです。
非公開求人というものがあるんですね!?
でも、どうやって探せばよいのでしょうか?
非公開求人を確認するための一つの方法は、直接企業に問い合わせてみることです。
もしあなたが、学会や特許情報などを通じて「この企業はこの研究をしているはず」という情報を掴んでいるのであれば、履歴書とともに直接企業に問い合わせることで非公開の求人情報を入手できる可能性があります。
ただ、やはり1社1社直接企業に問い合わせるのも非常に骨の折れる作業になります。
効率的に非公開求人情報を手に入れるには、「転職エージェント」が持っている非公開求人リストを入手するのがおすすめです。
転職エージェントは各企業とマッチングする求職者にだけ求人情報を提示していることから企業と親密な関係を築いることが多く、秘密性の高い非公開求人情報を多数保有しています。
優秀な人材を多数紹介してきた転職エージェントへの信頼性の高さによって、企業側も非公開求人という秘匿性の高い情報を特別に渡しているのですね
そのような非公開求人情報を手に入れられるだけでなく、職務経歴書の添削や面談対策まで、徹底してあなたの転職活動をサポートしてくれます。
ここまで手厚くサポートしてくれる転職エージェントですが、企業からの報奨金で運営しているため転職希望者は完全無料で利用できます。
完全無料で利用できますので、今すぐに民間企業転職を考えてなくても「良い求人が出てきたら紹介してください」とエージェントに依頼しておくのもよいですね
アカデミア出身者 (ポスドク・助教・准教授)に おすすめの転職エージェントは以下の記事でくわしく紹介しています。
メリットだけでなくデメリットも踏まえて解説していますので、民間企業転職を考えている方は是非参考にしてみてください。
【まとめ】あなたにあった環境で研究活動を続けよう!
本記事では、私自身が民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由と転職後の考えの変化をくわしく解説してきました。
- 【業績】これまで積み重ねた成果が無意味になるのが怖かったから
- 【経験】社会人経験がなく企業で活躍できる自信がなかったから
- 【環境】研究環境が変わることが嫌だったから
- 【教育】学生の教育が楽しかったから
- 【給料】民間企業の年収と比較したことがなく現状に満足していたから
いま振り返ってみると、今の安定状態をできる限り維持・継続したいという「現状維持バイアス」が強く効いていたのだと感じます。
現状維持では自分自身の成長の幅やキャリアの幅を狭めてしまうことになりえますので、
- 自分が成長できる環境はどういったところなのか?
- 満足して働ける場所はどこか?
を考えて、今一度あなたのキャリアのあるべき姿を考えてみてください。
以上で、私自身が民間企業転職前にアカデミアにこだわっていた理由の解説は終わりです。
質問等ありましたら、問い合わせフォームもしくはTwitterでからお問い合わせください。
お疲れ様でした!