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大学で研究者として続けていくことに難しさを感じつつも、アカデミアという枠を超えて企業就職するのが初めての経験であれば不安に感じますよね。
この記事では、大学から企業への転職を成功させた私が、民間企業転職を成功させるためのコツをくわしく説明していきます。
本記事を読むことで、自信を持って企業転職の一歩を踏み出せるようになりますよ。
- アカデミアから民間企業へ転職することの難しさ
- 【中途採用】ポスドク・助教の民間企業転職を成功させるコツ
- ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス
- 民間企業研究職と大学研究職の違い
- 比較①:【年収】企業>大学、転職で50%アップも狙える
- 比較②:【任期】企業は任期無し、ポスドク・助教はほぼ任期付き(1~5年)
- 比較③:【福利厚生】企業>大学、特に大企業は家賃補助や育児制度などが充実
- 比較④:【労働時間】企業で長時間労働は難しい、大学は残業・土日出勤が基本
- 比較⑤:【海外駐在】企業の海外駐在員は年収手取り1.5倍~、大学はほとんど変わらず
- 比較⑥:【業績評価】企業業績は幅広い分野で評価されやすい、大学業績の評価は限定的
- 比較⑦:【研究費】企業研究所はほとんどのテーマに潤沢な資金がある、大学は人・テーマによって差が大きい
- 比較⑧:【自由度】企業はテーマ選定や研究の仕方に制限が多い、大学は比較的自由に研究できる
- 企業研究者が向いている人・大学研究者が向いている人
- 【まとめ】年収アップ&任期なしの環境で研究を続けよう!
アカデミアから民間企業へ転職することの難しさ
転職成功の方策を考えるために、まずは大学から企業へ転職する際の困難ポイントを押さえておくことが重要です。
アカデミアから民間企業へ転職する際の難しさは以下の3点があります。
困難①:年齢の高さがマイナス要素 (一般的に40代以上の転職は難しいが…)
大学から企業へ転職する際の困難ポイント1つ目は「年齢の高さがマイナス要素になってしまうこと」です。
民間企業は、年収の高さや再教育の難しさから、高齢の人よりも若い人を優先的に採用します。
ポスドクや助教の方は、若くても30歳前後、中には40代の人も少なくないと思います。
民間企業転職を少しでも考えるのであれば、少しでも早く、1歳でも若いうちに行動に移すことをおすすめします。
「大学で成果が出てから…」などと考えていたら、あっという間に数年間経ってしまい転職できなくなってしまうんですね
しかし、「40代だからもう転職は無理だ」と諦める必要はまったく無いです。
なぜなら、これまで大学で研究を続けていた人は、高い専門性と長年の学生指導経験、研究テーマのマネジメント経験等があり、これらは企業でも必要とされる重要なスキル、経験になるためです。
実際に私の知り合いの一人は、40歳になってから助教→企業に転職しましたが、そのまま管理職として高給(1,200万円/年 以上!)をもらいながら研究を進めています
年齢で転職を完全に諦める必要はないですが、なるべく早く行動に移すことが重要になります。
困難②:博士人材の専門性の高さを活かせる求人が限られる
大学から企業へ転職する際の困難ポイント2つ目は「博士人材の専門性の高さを活かせる求人が限られること」です。
博士人材の専門性の高さは、企業の需要と一致すれば大きな魅力に見える一方で、そもそも専門がそのまま活かせる求人が少ないという現実があります。
近年需要が高まっている情報系やデータ分析系などの分野であれば引く手あまたですが、ニッチな分野だと簡単には自分に合う求人に出会えません。
私もたまたま1社だけピンポイントな求人を見つけられたので良かったですが、そうでなければ転職活動も大幅に長引いていたと思います
求人が少ないことを念頭に入れ、
- スカウト型の転職サイトに早めに登録しておく
- 良い求人が入り次第連絡してもらうよう、転職エージェントに依頼しておく
- より多くの非公開求人を探す
などの対策が必要になります。
困難③:転職活動時間の確保が難しい
大学から企業へ転職する際の困難ポイント3つ目は「転職活動時間の確保が難しいこと」です。
ポスドクや助教は、夜間や土日にも大学で研究されている方も多く、転職活動にあてる時間が非常に限られています。
平日に有給が取りにくい雰囲気もあり、面談に行くのも一苦労ですよね。
対策としては、求人探しや職務経歴書、面談対策をサポートしてくれる転職支援サービスを有効に活用し、あなたの転職活動時間を可能な限り減らすことです。
これについては、次章の「ポスドク・助教の民間企業転職を成功させる方法」で詳しく説明します
ここまで大学から企業への転職が難しい理由を紹介してきました。
これらの困難さを踏まえた上で、どのようにたち振る舞えば転職を成功させられるのか、その秘訣を次章で見ていきましょう。
【中途採用】ポスドク・助教の民間企業転職を成功させるコツ
それでは、いよいよポスドク・助教が民間企業への転職を成功させる方法を解説していきたいと思います。
大学から民間企業へ転職する際の重要なポイントは以下の4点です。
方法①:【時間の確保】他人を活用して効率的に動くべし
大学から民間企業へ転職する際の重要なポイント1つ目は「他人を活用して効率的に動くこと」です。
まだ現役でポスドク・助教として働いているのであれば、なかなか転職活動にあてる時間を確保することは難しいですよね。
そこでおすすめしたいのが、他人、つまり専用サービスや専門家を最大限活用して転職活動を効率化することです。
転職活動では、主に以下のような作業、プロセスが必要になります。
- スケジュール立て
- 自己分析
- 情報収集
- 求人探し
- 履歴書作成
- 職務経歴書作成
- 応募
- 面談対策
- 面談
これらのプロセスの中でも、自己分析や情報収集、求人探し、職務経歴書作成、面談対策などは経験が少なく、非常に多くの時間がかかってしまいます。
そこでおすすめしたいのが、転職サイトや転職エージェントといった転職サポートを専門にするサービスや専門家を利用することです。
転職を専門として事業をおこなっていることから、非常に多くの経験や求人情報を持っており、あなたにあった求人の紹介や各企業に合わせた面談対策などをサポートしてくれます。
面談対策まで付き合ってもらえるのは嬉しいですね
転職支援サービスを最大限活用することで、あなたが研究室で研究している間、学生実験を補助している間などにも職務経歴書の添削や求人探し、あるいは企業への売り込みなどを進めることができます。
これらのサービスは基本的にすべて無料で受けられますので、あなたに合った転職支援サービスを見つけて活用してみましょう。
方法②:【求人探し】非公開求人を探すべし
大学から民間企業へ転職する際の重要なポイント2つ目は「非公開求人を探すこと」です。
マイナビやリクナビといった大衆向けの就活・転職サイトの求人を確認したことがある人は多いと思いますが、実はそれらの公開求人の他に、大々的には公開していない非公開求人というものが存在しています。
特に研究職ポジションなどの専門性が高い職種は、競合企業に内部戦略を知られないように求人を完全公開しないことが多いのです。
非公開求人というものがあるんですね!?
でも、どうやったら確認できるんでしょうか?
非公開求人を確認するための一つの方法は、直接企業に問い合わせてみることです。
もしあなたが、学会や特許情報などを通じて「この企業はこの研究をしているはず!」という情報を掴んでいるのであれば、履歴書とともに直接企業に問い合わせることで非公開の求人情報を入手できる可能性があります。
ただ、やはり1社1社直接企業に問い合わせるのも非常に骨の折れる作業ですよね。
効率的に非公開求人情報を手に入れるには、「転職エージェント」が持っている非公開求人リストを入手するのが最もおすすめです。
転職エージェントについては後ほど詳しく解説しますが、ピンポイントにマッチングする求職者にだけ求人情報を提示している転職エージェントは企業と親密な関係を築いることが多く、秘密性の高い非公開求人情報を多数保有しています。
いま民間企業転職を考えている人は、無料登録だけしておいて「良い求人が出てきたらエージェントに連絡してください」と依頼しておくのもよいですね
方法③:【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし
大学から民間企業へ転職する際の重要なポイント3つ目は「企業に受け入れられやすい言葉に”翻訳”すること」です。
後ほど、比較⑥ 【業績評価】企業業績は幅広い分野で評価されやすい、大学業績の評価は限定的 でも述べますが、大学での業績は企業で理解されにくい部分があります。
ただ、あなたの持つ優れたスキルが企業人にも伝わるように適切に“翻訳”することができれば、「これは優秀な人材が来てくれた!」と思ってもらえる可能性が高まります。
例えば、あなたが「インパクトファクター10以上のジャーナルに論文を出した」成果があるとします。
単に「IF10以上の論文を出しました」とだけ伝えても、文系人材が比較的多い企業人事の人にはなかなかその凄さは伝わりません。
上に挙げた例文では、
- インパクトファクターの重要性
- アカデミアで大きな成果を出すためにする施策(テーマ継続、資金獲得、共同研究、学生指導など)
などのアカデミアでは当たり前だけれど、企業の人にとっては理解しにくいアピールポイントがバッサリと抜けています。
確かに学部卒などの企業人事の人には、その価値が伝わらないかもしれませんね
これを企業でも評価されるような文章に置き換えると、例えば以下のようになります。
これまでアカデミアでは「〇〇の論文誌にアクセプトされた!」と言うだけで、その凄さをそのまま理解してもらっていたと思います。
しかし、民間企業に転職する際にはアカデミックの世界を知らない人でも理解できるように「翻訳」してアピールすることが重要なのです。
方法④:【面接対策】企業側の懸念点を理解し面接官を安心させるべし
大学から民間企業へ転職する際の重要なポイント4つ目は「企業側の懸念点を理解し面接官を安心させること」です。
アカデミアという特殊な環境で生きてきた博士人材に対し、企業は「本当にこの人はうちの会社でうまく業務をこなしてくれるのか…?」という心配を持っています。
直接顔を見ながら受け答えできる面接では、その辺りの企業側の心配を先回りして解消することが面談成功の秘訣となります。
例えば、企業側の心配事として挙げられるのは以下のような事柄があります。
- 自分の専門外の仕事に対してもやる気を持って業務をしてくれるのか?
- 数年後に他部署に異動しても退職せず続けてくれるか?
- 実際に手を動かして(アドバイザー専門ではなく)考えながら研究を進めてくれるか?
- 管理職として他部署との社内調整も問題なくできるか?
- 部下の教育は丁寧におこなってくれるか?
- 社内の手続きや安全対策なども真面目に対応してくれるか?
etc…
私も、「専門以外のテーマになったとしても続けられる自信はありますか?」という質問は面接のたびに聞かれました。
博士人材のこだわりの強さは、企業にとっては少し扱いづらいと感じているのだろうと思います
特に年齢が高い場合、1から完璧に社内教育をすることも難しいので、ある程度上記の心配事に対して問題ない人を雇いたいと考えています。
これらの企業側の懸念点を解消できるような転職面接ができると最高ですね。
ポスドク・助教の転職成功のポイントは以上となります。
次章では、ここでお伝えした転職成功のポイントを押さえるために役立つ転職支援サービスを紹介していきます。
基本無料で使えるサービスを中心に紹介していますので、安心して活用してみてくださいね
ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス
それでは、ポスドク・助教におすすめの転職支援サービスを見ていきましょう。
おすすめの転職支援サービスは以下の4種類です。
おすすめ①:「転職エージェント」~非公開求人紹介から面談対策まで徹底したサポート~
ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス1つ目は「非公開求人紹介から面談対策まで徹底したサポートを受けられる”転職エージェント”」です。
転職エージェントは、求職一人ひとりに専属のアドバイザーがつき、求人紹介から職務経歴書作成、面接対策まで徹底的に転職活動をサポートしてくれるサービスです。
- 専属アドバイザーがあなたにあった求人を紹介
- 非公開求人も多数取り扱う
- 職務経歴書作成、面接対策も徹底サポート
- 求職者は完全無料
方法③:【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし で紹介したアカデミア実績の”翻訳”や、方法②:【求人探し】非公開求人を探すべし で紹介した非公開求人も取り扱いますので、非常に心強いパートナーになります。
私の知り合いも、転職エージェントで非公開求人情報を手に入れてピンポイントな研究職ポジションを獲得していました
ここまで手厚くサポートしてくれる転職エージェントですが、企業からの報奨金で運営しているため転職希望者は完全無料で利用できます。
完全無料で利用できますので、今すぐに民間企業転職を考えてなくても「良い求人が出てきたら紹介してください」とエージェントに依頼しておくのもよいですね
転職エージェントとして有名なのは、dodaやリクルートエージェント、JACリクルートメント、アカリクキャリアなどがあります。
特にアカリクキャリアは、アカデミア出身者(博士、ポスドク、助教など)に特化した求人を多数取り扱っており、ポスドクや助教の方にピッタリの転職エージェントになっています。
アカリクのコンサルタントは【技術理解】【業界理解】【求人理解】が高く、その多くが博士・ポスドクの背景を持つため、あなたの魅力を即座に理解し、あなたにあった環境を提案できます。
アカリクキャリアー株式会社アカリク
別記事でポスドク・助教・准教授などのアカデミア出身者におすすめの転職エージェントをランキング形式で紹介していますので、エージェントサービスを活用して「転職を必ず成功させたい!」という方は是非ご覧ください。
\メリット・デメリットを徹底解説!/
おすすめ②:「スカウト型転職サイト」~企業からのスカウトが届く~
ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス2つ目は「登録しておけば企業からのスカウトが届く”スカウト型転職サイト”」です。
スカウト型転職サイトは、初回登録しておくことで企業があなたの経歴を確認し都度スカウトを送ってきてくれるサイトです。
- 非公開ポジションのスカウトが来る可能性もある
- 基本的には初回登録をしたあとはスカウトが来るのを待つだけ
- よりよいポジションを見つけるためなら長期戦でもOK!な人向け
基本的には企業側からのスカウトを待つためすぐにでも内定をもらいたい人には向きませんが、必要な作業は初回の経歴登録等だけですので、長期的により良いポジションを見つけたいという人にはおすすめのサービスです。
スカウト型転職サイトとして有名なのは、ビズリーチ、doda、iX転職、リクナビNEXTなどがあります。
基本的には最初の基本情報登録のみで、あとは待つだけで良いので、転職エージェントによるサポートと並行してよりよい求人情報を待つのがおすすめの活用方法になります。
おすすめ③:「求人型転職サイト」~求人情報を幅広く確認~
ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス3つ目は「求人情報を幅広く確認できる”求人型転職サイト”」です。
求人型転職サイトは、現時点で公開されている多くの求人情報を確認できるサイトです。
- 幅広い分野から多数の求人を掲載
- 絞り込み機能で自分にあった求人を探しやすい
- 転職市場の需要把握に役立つ
転職エージェントのような徹底的なサポートは受けられないものの、非常に多くの求人情報を絞り込み機能を活用しながら確認することができますので、自分が少しでも興味がある分野における市場の需要を把握することができます。
求人型転職サイトとして有名なのは、dodaやキャリトレ、エン転職、マイナビ転職などがあります。
求人型転職サイトで求人情報の概要を掴みつつ、転職エージェントによるサポートを受けて内定につなげるのがおすすめの活用方法になります。
おすすめ④:「市場価値チェックサービス」~自分の適正年収を確認~
ポスドク・助教におすすめの転職支援サービス4つ目は「自分の適正年収を確認できる”市場価値チェックサービス”」です。
年齢、経歴、スキル等の情報を入れることで、これまでの求人情報と自動で照会しあなたの適正年収を提示してくれるサービスになります。
特にこれから大きく労働環境が変わる転職予定のポスドクや助教にとっては、どの程度自分自身が転職市場で評価されるのかを知ることは重要です。
市場価値チェックサービスを提供している代表的なサイトは「ミイダス 」という転職サイトになります。
ミイダスの場合、特にスキルに関して細かく診断しており、経験のある技術(フィルタ、渡航、重合、合成、分散、etc…)や分析機器(SEM、TEM、XRD、AFM、etc…)など、研究者にとって馴染みのあるスキルも評価対象になっています。
特に理系の研究者は、強みとしてアピールできる技術がたくさんありそうだったという人も多いのではないでしょうか?
私自身も今現在の状況を正直に入力して試してみました。
現状の年収450万円のところ、診断後に表示された累積ユーザーのオファー年収実績は672万円という結果が出ました。
この年収実績はあくまで参考値にはなりますが、ユーザー登録まで完了させることで今現在募集されているあなたにあった求人も確認することができます。
さらに、ミイダスでは「コンピテーション診断」も無料でおこなうことができ、こちらも人気のサービスとなっています。
例えば、職種の適正やストレスを感じやすい環境、あなた自身の強みなどを客観的に分析してくれますので、企業就職後に「こんなはずじゃなかった…」という後悔を未然に防げる可能性が高まります。
アカデミア出身者の方も、企業であればどのくらいの年収になるのかを「市場価値チェック 」で一度確認してみてはいかがでしょうか?
\たったの5分で診断完了!/
民間企業研究職と大学研究職の違い
最後に、民間企業研究者とポスドク・助教の労働環境・研究環境の違いをいま一度確認しておきましょう。
これにより、転職活動へのモチベーションを高めるられることに加え、転職後に後悔することを防ぐこともできます。
たとえ希望の職場に転職できたとしても、あとで後悔することになっては本当の意味での「転職の成功」とは言えませんからね
企業/大学研究者の労働環境の大きな違いは以下の8点です。
比較①:【年収】企業>大学、転職で50%アップも狙える
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い1つ目は「年収」です。
一般的に、大学で研究するよりも企業で働くほうが多くの給料をもらえる場合が多いです。
私自身も、ボーナスがフルでもらえるようになる転職2年目には、大学時代と比較し年収が約50%アップしました
これは、給料の出どころを考えれば当然の結果と言えます。
大学の場合、国からの補助金や教授のプロジェクト予算といった限られた財源の中からポスドク・助教の給料が支払われます。
これらの予算の出どころの大部分は税金である(と世間的に見られる)場合が多いので、世論も踏まえて考えるとできる限り安い給料で雇いたいという意志が働いてしまいます。
「国のお金で好きな研究ができているからいいでしょ」という批判は、残念ながら最近でもまだ聞くことがありますもんね…
一方で民間企業の場合は、「企業自身が獲得した利益」という潤沢かつ使いやすい予算の中から新たな研究者を雇うことになります。
特に、将来の「お金のなる木」を育てる研究部門に対しては、多額のお金を使ってでも優秀な人物を獲得し、より早く成果を上げてもらいたいという意志が働きますので、大学と比較し高い給料が支払われることが多いのです。
比較②:【任期】企業は任期無し、ポスドク・助教はほぼ任期付き(1~5年)
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い2つ目は「任期」です。
ご存知の通り、大学でポスドクや助教をする場合はほとんどの場合1~5年間程度の任期付きポジションに就くことになります。
ポジションの流動化を狙った制度ではあるのですが、現場の研究者にとっては先が見えない中ですぐに成果があがるような目先のテーマを中心に研究を進めなければならなくなります。
そのような環境では家庭を持つことも難しいですよね…
ポスドクや助教も一人の人間なので、なんとか制度を見直してほしいものです
一方で、民間企業では特殊な例を除き専門職として雇われた研究者は任期がありません。
これにより、研究者のポジションや給料が長期間保証されますので、目先の小さな成果でなく将来の大きな目標に向かって着実に研究を進めることができます。
民間企業は任期無し、ポスドク・助教はほぼ任期付き(1~5年)となる場合が多く、こちらも企業研究者に軍配が上がります。
比較③:【福利厚生】企業>大学、特に大企業は家賃補助や育児制度などが充実
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い3つ目は「福利厚生」です。
民間企業に入ると、家賃補助や産休・育休制度、有給制度、教育補助、宿泊施設等の割引、財形制度など、様々な福利厚生が充実しています。
もちろん大学にも福利厚生はありますが、大きな違いはそれらの福利厚生が利用しやすいかどうか?にあります。
有給休暇も福利厚生のひとつなので一例として考えたいのですが、あなたは大学で有給を実質どのくらい消化できていますでしょうか?
システム上は消化していても、結局大学に行って雑務や実験をしているという人も多いのではないでしょうか?
確かに大学の先生が平日に休んでいるのはほとんど見たことありませんね…
一方で、企業の場合は各会社、各部署で有給を確実に消化しようという雰囲気ができており、8割以上消化しているという人も多くなってきています。
有給は一例ですが、その他にも男性の育休制度利用率や財形制度利用率などは、企業では積極的に福利厚生の利用を推奨している一方で大学はそこまで力を入れていない印象が強いです。
私も助教時代には、通勤手当や健康保険以外についてはほとんど知らされたり利用を推奨されることはありませんでした…
「実質利用可能性」を踏まえると、福利厚生に関しても企業、大学で大きな差がありそうですね。
比較④:【労働時間】企業で長時間労働は難しい、大学は残業・土日出勤が基本
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い4つ目は「労働時間」です。
企業では、36協定や社内キャンペーンなどによって長時間労働をすることが難しくなっており、残業や休日出勤はかなり少ない状況になっています。
私の所属している企業研究所は多い人でも月20時間程度です。1日1時間程度残業して帰るくらいのイメージですね
大学の場合についても考えていきたいのですが、私の周りにいた先生方のほとんどは20時以降も大学に残っていて、また土日も当たり前のように出勤されている人が多かったです。
長時間働いていても残業代が出ていれば全く問題ないのですが、裁量労働制で雇われている研究者が多いこともあり、どれだけ長時間労働しても残業代、休日出勤手当が出ることはありませんでした。
あなたの周りの先生方はどのくらい大学に残って研究、雑務をしていますか?
もしよければTwitterのDMなどで教えて下さいね。
比較⑤:【海外駐在】企業の海外駐在員は年収手取り1.5倍~、大学はほとんど変わらず
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い5つ目は「海外駐在」です。
ポスドクや助教をされている方の中には、海外学振や国際共同研究強化A・B、または海外研究者との共同研究などで海外で長期間研究されていた、している、あるいはこれからする予定の人も多いことでしょう。
企業の場合ももちろん海外に長期間滞在して研究をおこなう可能性があるのですが、その際の待遇が大学と大きく異なります。
企業で海外駐在する場合、例えば以下のような金銭的補助が追加で受けられるため、額面で1.3倍~1.8倍、手取りで1.5倍~2.5倍程度多くなると言われています。
- 住民税、所得税の一部を会社が負担 (駐在先の税制が大きく異なるため)
- ハードシップ手当 (後進国であれば20~30万円/月もらえることも)
- 住宅手当 (日本勤務時よりも多くもらえる。50~100%会社負担の場合が多い)
- 出張手当 (海外駐在中は長期出張が多くなるため日当等が多くなる)
- 車本体・ガソリン代 (必要経費として100%近く会社が負担)
- お手伝いさん (駐在先によるが、こちらも必要経費として会社負担)
大学の場合だと、ここまで手厚い特別手当をもらえるという話は聞いたことがありませんので、海外経験を積み重ねたい人は企業勤務のほうが有利であるといえます。
比較⑥:【業績評価】企業業績は幅広い分野で評価されやすい、大学業績の評価は限定的
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い6つ目は「業績評価」です。
大学では論文や受賞歴、教育実績等が主な人事評価基準となり、昇進やポジション獲得が決まります。
一方、民間企業の研究職では、特許やマネジメント経験、プロジェクトへの貢献経験等が評価されます。
企業出身者が大学に行く場合、企業側の評価軸を考慮した上で受け入れられることが多いです。
私の周りでも民間企業から准教授や教授で入ってきた先生が何人かいましたね
逆に大学から企業に行く場合、企業の人事部にアカデミアに理解がある人がいないことも多く、どんなにハイインパクトな論文を持っていたとしても正当に評価されないこともあります。
企業へ転職する場合、大学で獲得した業績を企業で評価されるように「翻訳」することが重要です
比較⑦:【研究費】企業研究所はほとんどのテーマに潤沢な資金がある、大学は人・テーマによって差が大きい
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い7つ目は「研究費」です。
大学の若いポスドク、助教は、自分自身で獲得できる予算は多くても年間500~1,000万円くらいかと思います。
教授のお金も含めた研究室全体で見ても、1億円/年あればかなり規模の大きい研究室と言われます。
一方企業の場合は、1テーマに年間数億円の予算がつくことも珍しくなく、非常に規模の大きな研究ができます。
事業化に近ければ近いほど、企業は研究投資を惜しみませんもんね
ただし企業の研究費には問題があり、新しいテーマ、実験を試してみたいと思い100万円程度の予算が必要になったとしても新テーマにはなかなか予算をつけてもらえません。
大学であれば、比較的用途が自由な科研費や共同研究費、民間予算などを取ることで、研究テーマの「種まき」をすることができますので、この点は大学のほうが自由度高く研究できる環境であると言えます。
入社してから「科研費に申請できればなぁ」と思ったことが何回もありました…
- 大きなお金を動かして目の前の成果を確実に取りに行くか?
- 柔軟に予算を分配しながら将来的に大きな発見につなげるか?
このあたりは各研究者によって合う合わないが分かれるところかなと思います。
比較⑧:【自由度】企業はテーマ選定や研究の仕方に制限が多い、大学は比較的自由に研究できる
民間企業研究者と大学研究者の労働環境の違い8つ目は「自由度」です。
- 研究テーマを自由に設定できるかどうか?
- 研究活動の進め方を縛る規則がどの程度厳しいか?
ここで言う自由度は、
という2つの視点でお話しします。
まず1つ目の研究テーマを自由に設定できるかどうかは、比較⑦【研究費】企業研究所はほとんどのテーマに潤沢な資金がある、大学は人・テーマによって差が大きい でも述べたように、企業の新規テーマ創出は難しく、この点は自由度の高い大学に軍配が上がると言えます。
企業では新テーマに対する予算が取りにくいんでしたよね
2つ目の規則についてですが、企業で研究をする際には非常に多くのルールがあり、正直この環境では基礎研究は無理だな…と感じる程です。
例えば、新しい薬品を使う際には1ヶ月以上かけて面倒くさい申請を通す必要があります。
また、簡単な装置を組み立てることも基本的には許されておらず、全て社内安全対策を満たした装置であることを生産技術部という他部署と調整しながら長い時間とお金をかけて組み上げていきます。
研究を進める上での不自由さには未だになかなか慣れないままです。
企業が高い研究費を払ってでも大学と共同研究をしたがる理由がわかった気がします (企業では基礎研究が全然進まない)
そういった意味で、自分で1から着実にテーマを育てていきたいという人は会社での研究は難しいかもしれません。
逆に、ある程度育ったテーマであれば潤沢なお金と人材を活用して一気に開発が進みますので、そういった「10→100」の研究でも楽しめるという人は企業研究者が合っているかもしれません。
企業研究者が向いている人・大学研究者が向いている人
ここまでに紹介した企業・大学研究者の違いを踏まえると、企業研究者を狙って転職すべき人、このまま大学研究者を継続すべき人は以下のようにまとめられます。
- 年収や福利厚生など、自分自身の金銭的・時間的豊かさを求める人
- 自分の専門外の分野も含め、研究活動そのものに面白さを感じられる人
- マネジメントスキルや社内調整スキルなど、どの企業でも重宝される能力を身に着けたい人
- 自分の研究が目に見えて社会に役立つことに喜びを感じる人
- 金銭的・時間的な豊かさよりも名声を求める人
- 自分の専門内容を生涯を通じて突き詰めたい人
- 長い将来を考えても、自分の中に企業転職という選択肢は無いと断言できる人
- 近い将来社会に役立つかどうかはどちらでもよく、遠い先の未来に認められるような成果が出ればいいと思える人
自分がのめり込めるテーマを徹底的に突き詰め、その分野の第一人者になりたい人は大学に残るべき人材だと思います。
逆に、自分の金銭的、時間的豊かさもある程度重視したい、自分の開発した材料やサービスが世の中で役立つことに喜びを感じるといった人は、民間企業転職も含めて検討してもよいかもしれません。
「名声」を取るか、「生活の充実」を取るか…
人によって希望が大きく分かれそうですね
ここまで、企業研究者と大学研究者の違いを説明してきましたが、あなたはどのように感じましたでしょうか?
もし少しでも一歩踏み出して企業転職を考えてみたいと思われた方は、本ページの内容を参考に転職活動を始めてみてください。
【まとめ】年収アップ&任期なしの環境で研究を続けよう!
本記事では、ポスドク・助教が民間企業転職を成功させるためのコツをくわしく解説してきました。
まず最初に大学から企業へ転職する際の難しさに触れ、その難しさを踏まえた上での転職成功のポイントを具体的に解説しました。
- 【時間の確保】他人を活用して効率的に動くべし
- 【求人探し】非公開求人を探すべし
- 【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし
- 【面接対策】企業側の懸念点を理解し面接官を安心させるべし
次に、企業転職成功をサポートしてくれるおすすめの転職支援サービスを4種紹介しました。
- 非公開求人紹介から面談対策まで徹底したサポートを受けられる「転職エージェント」
- 登録しておけば企業からのスカウトが届く「スカウト型転職サイト」
- 求人情報を幅広く確認できる「求人型転職サイト」
- 自分の適正年収を確認できる「市場価値チェックサービス」
最後に、転職活動へのモチベーションを高めるため、そして転職後の後悔を防ぐために、企業と大学での研究環境の違いについて確認しました。
- 【年収】企業>大学、転職で50%アップも狙える
- 【任期】企業は任期無し、ポスドク・助教はほぼ任期付き(1~5年)
- 【福利厚生】企業>大学、特に大企業は家賃補助や育児制度などが充実
- 【労働時間】企業で長時間労働は難しい、大学は残業・土日出勤が基本
- 【海外駐在】企業の海外駐在員は年収手取り1.5倍~、大学は大きく変わらず
- 【業績評価】企業業績は幅広い分野で評価されやすい、大学業績の評価は限定的
- 【研究費】企業研究所はほとんどのテーマに潤沢な資金がある、大学は人・テーマによって差が大きい
- 【自由度】企業はテーマ選定や研究の仕方に制限が多い、大学は比較的自由に研究できる
ポスドクや助教などのアカデミア経験者は、論理的思考力やコミュニケーション能力、資料作成能力などが優れている人が多いです。
それらをうまく企業に伝えられることができれば、志望の研究ポジションを獲得し企業研究者として活躍できる可能性は高くなります。
本記事の内容を参考に、企業転職を成功させるための第一歩を踏み出してみてください
以上で、ポスドク・助教が企業転職を成功させるためのコツの紹介は終わりです。
質問等ありましたら、問い合わせフォームもしくはTwitterでからお問い合わせください。
お疲れ様でした!