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現在大学で働いているポスドクや任期付きの助教の人の中には、新たな研究環境を求めて民間企業への転職を考えている人もおられると思います。
民間企業の待遇面の良さは聞いたことがあっても、転職後に「大学のほうが良かった…」と後悔する可能性もあるため、なかなか簡単には転職を決めきれませんよね。
この記事では、実際にアカデミアから民間企業に転職した私が転職後に気づいたアカデミアのメリットをくわしく紹介していきます。
本記事を読むことで、あなたの今後のキャリア選択の参考になりますよ。
企業転職後に気づいたアカデミアのメリット
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリットは以下の7点です。
メリット①:【時間】裁量労働制のため時間が自由に使える
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット1つ目は「裁量労働制のため時間が自由に使えること」です。
大学での勤務は裁量労働制でしたので、始業時間、就業時間の縛りがありませんでした。
教授の先生も含めて毎日8:30までに出勤するわけではなく、日によって6時頃に出勤することもあれば、逆に正午頃に研究室に行くこともできました。
その日その日の予定や体調、気分に合わせて自由に時間を調整することができますので、快適に研究をすることができていましたね
企業ではどんなに前日遅い時間まで勤務していたとしても、体調がすぐれないとしても、毎日同じ時間に出勤して仕事をする必要があります。
研究に集中できない時間帯もありますので、時間を自由に割り振れるアカデミアは非常に効率よく研究を進められる環境であると感じます。
メリット②:【残業】満足いくまで研究を続けられる
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット2つ目は「満足いくまで研究を続けられること」です。
裁量労働制は始業時間だけでなく就業時間に関しても縛りがありません。
普段研究をされておられる方も、実験や計算が勢いづいていき気づいたら夜中まで作業していたという経験がある人も多いのではないでしょうか?
企業の場合は残業時間管理が厳しく、多くても毎日2時間まで(36協定の 40時間/月 制限)しか基本的には残業できません。
終わりの時間が決められているため装置の回転率も低くなり、どうしても研究進捗が悪くなってしまいます。
ただし、残業代が出ない点については少し残念に感じる部分もあります。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
研究を効率よく進めるためには、アカデミアのように自由に時間が使える環境が重要であると感じます。
メリット③:【業績】論文や学会発表などの研究成果が積み上がっていくのが楽しい
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット3つ目は「論文や学会発表などの研究成果が積み上がっていくのが楽しいこと」です。
民間企業の研究員も特許執筆や学会発表はしますが、個人というよりはチームとしての成果として見られることが多く、自分自身の業績が積み上がっている実感が得られません。
会社都合で外部発表できないこともあり、着実な成果獲得が難しい環境にあります。
アカデミアでは、自分自身の頑張りによって、継続的かつ着実に論文や学会発表、受賞などの業績を積み重ねることができます。
その業績をもとに適切にアピールすることで、新たな研究費や次の研究職ポジションを獲得にも繋がります。
積み重ねた成果が確実に未来につながっている実感を得られるのは、アカデミアの大きな魅力ですね
メリット④:【規制】安全対策などのルールが緩い
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット4つ目は「安全対策などのルールが緩いこと」です。
民間企業では研究所も含めて安全対策が非常に厳しく、研究進捗が遅くなる要因の1つになっています。
例えば、新しい薬品を使う際には1ヶ月以上かけて面倒くさい申請を通す必要があります。
また、簡単な装置を組み立てることも基本的には許されておらず、全て社内安全対策を満たした装置であることを生産技術部という他部署と調整しながら長い時間とお金をかけて組み上げていきます。
研究を進める上での不自由さには未だに慣れないままですね…
大学では、研究費さえあれば必要な装置や物品はすぐに導入できますし、使用上の縛りも少ないですよね。
もちろん継続的な研究のためにも安全意識は重要ですが、基礎研究を進展させるためには「自由度」と「安全対策」の適切なバランスが重要なのだと感じました。
メリット⑤:【交流】他人と関わらなくてもいい場面が多い
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット5つ目は「他人と関わらなくてもいい場面が多いこと」です。
企業にいると、常に同僚や上司、他部署、他社と関わりながら研究、業務を進めていきます。
研究には直接関係ないような関係調整的なミーティングなども多く、時間的、体力的、精神的にすり減ってしまうような感覚があります。
一日に全く実験ができない日も頻繁にありますね…
今考えると、大学は(特に教授になるまでは)ある程度研究活動自体に集中できる環境だったと感じます。
研究に関係ないミーティングは少なかったですし、会社で言う部長や役員に対する無駄な気遣いをする必要もほとんどありませんでした。
余計な人との関わりが少ないという意味でも、大学は研究に集中しやすい環境だったと思います。
メリット⑥:【教育】学生への指導は楽しい
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリット6つ目は「学生への指導は楽しいこと」です。
民間企業に転職し指導される側の立場になりましたが、そこで始めて「大学での後輩への指導は楽しい時間だったな」と気づきました。
自分が教えた事柄によって後輩が成長するのを見るのも楽しいですし、教えることによって自分自身の考えや知識がアップデートしていく実感もありました。
もちろん、民間企業でも昇進していけば教育する立場にもなると思いますが、最近の企業はハラスメントに厳しくなってきていますので、その辺りをお互いに気にしながらのぎこちない関係になってしまうのではないかと思います。
実際に、私の上司も必要以上に距離を縮めすぎないように気を遣っているなと感じるときがありますね
研究室での年齢も立場も近い者同士での指導は、非常に楽しく勉強になる時間だったと感じています。
メリット⑦:【事務】社内手続きが比較的楽
民間企業転職後に気づいたアカデミアのメリッ7つ目は「社内手続きが比較的楽こと」です。
企業で働いていると、様々な場面で承認作業がつきまといます。
例えば、
- 出張旅費申請
- 学会・論文発表申請
- 固定資産投資
- 設備の稼働許可
- 現場作業者への作業依頼
etc…
など、都度上司や他部門の承認をもらう必要があります。
アカデミアでは、企業との共同研究をしていない限り、学会発表や論文発表に対して押印をする必要はありませんよね。
他にも、大学では形式だけの手続きも多かったので、民間企業の責任の重い手続き各種は非常に面倒くさいと感じています。
事務手続きという意味でも、大学は研究活動に集中しやすい環境だと思います。
【ポスドク・助教】民間企業への転職を成功させるには?
ここまでで、転職後に気づいたアカデミアのメリットをくわしく紹介してきました。
当たり前だと思っていた大学の環境も、民間企業ではそうでない場合もあるということがよくわかりました。
それでもやはり待遇面での良さなどを優先したいので企業転職にチャレンジしてみたのですが、具体的にどのように行動すれば企業研究所への転職を成功させることができるのでしょうか?
現在ポスドク・助教をされておられる方が、民間企業転職を成功させるコツは以下の4点です。
- 【時間の確保】他人を活用して効率的に動くべし
- 【求人探し】非公開求人を探すべし
- 【職務経歴書】企業に受け入れられやすい言葉に「翻訳」すべし
- 【面接対策】企業側の懸念点を理解し面接官を安心させるべし
特に、民間企業の研究職への転職を考えている人は「非公開求人」を徹底的に探すことが重要になります。
大衆向けの就活・転職サイトに登録されている求人を確認したことがある人は多いと思いますが、実はそれらの公開求人の他に、大々的には公開していない非公開求人というものが存在しています。
研究職ポジションなどの専門性が高い職種は、競合企業に内部戦略を知られないように求人を完全公開しないことが多いのです。
非公開求人というものがあるんですね!?
でも、どうやって探せばよいのでしょうか?
非公開求人を確認するための一つの方法は、直接企業に問い合わせてみることです。
もしあなたが、学会や特許情報などを通じて「この企業はこの研究をしているはず」という情報を掴んでいるのであれば、履歴書とともに直接企業に問い合わせることで非公開の求人情報を入手できる可能性があります。
ただ、やはり1社1社直接企業に問い合わせるのも非常に骨の折れる作業になります。
効率的に非公開求人情報を手に入れるには、「転職エージェント」が持っている非公開求人リストを入手するのがおすすめです。
転職エージェントは各企業とマッチングする求職者にだけ求人情報を提示していることから企業と親密な関係を築いることが多く、秘密性の高い非公開求人情報を多数保有しています。
優秀な人材を多数紹介してきた転職エージェントへの信頼性の高さによって、企業側も非公開求人という秘匿性の高い情報を特別に渡しているのですね
そのような非公開求人情報を手に入れられるだけでなく、職務経歴書の添削や面談対策まで、徹底してあなたの転職活動をサポートしてくれます。
ここまで手厚くサポートしてくれる転職エージェントですが、企業からの報奨金で運営しているため転職希望者は完全無料で利用できます。
完全無料で利用できますので、今すぐに民間企業転職を考えてなくても「良い求人が出てきたら紹介してください」とエージェントに依頼しておくのもよいですね
アカデミア出身者 (ポスドク・助教・准教授)に おすすめの転職エージェントは以下の記事でくわしく紹介しています。
メリットだけでなくデメリットも踏まえて解説していますので、民間企業転職を考えている方は是非参考にしてみてください。
【まとめ】アカデミアは研究活動に集中できる環境が整っている!
本記事では、転職後に気づいたアカデミアのメリットをくわしく解説してきました。
- 【時間】裁量労働制のため時間が自由に使える
- 【残業】満足いくまで研究を続けられる
- 【業績】論文や学会発表などの研究成果が積み上がっていくのが楽しい
- 【規制】安全対策などのルールが緩い
- 【交流】他人と関わらなくてもいい場面が多い
- 【教育】学生への指導は楽しい
- 【事務】社内手続きが比較的楽
民間企業の研究所に転職したあとに実感したのは、やはりアカデミアは研究活動に集中しやすい環境が整っているということでした。
時間的、精神的、規則的、事務的に研究者のことをよく理解した構造になっていると思います。
大学、企業双方のメリット・デメリットを踏まえた上で、
- 自分が成長できる環境はどういったところなのか?
- 満足して働ける場所はどこか?
を考えて、今一度あなたのキャリアのあるべき姿を考えてみてください。
以上で、転職後に気づいたアカデミアのメリットの解説は終わりです。
質問等ありましたら、問い合わせフォームもしくはTwitterでからお問い合わせください。
お疲れ様でした!